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東京国際芸術祭2005開催にあたって


 いまから10数年前にベルリンの壁が壊れ、「戦争と革命」の20世紀の終焉を目の当たりにしたが、その時はそこから10数年たった<今>がこんなになっているとはだれも想像できなかったに違いない。<世界>の壊れ方と弱肉強食の非人間的世界の出現によって、あらためて「芸術は何ができるのか」とこのなんとも古典的な課題を背負い込むはめに陥るとは…。招聘するベルリンのフォルクスビューネ芸術総監督カストルフの作品には<世界>への痛切な皮肉がこめられている。このような「世界を抱え込みながら」、なお作品を創りつづけようとする意志はどこからくるのだろう。日本のアーティストは世界のアーティストと意識を共有しているのだろうか。今回再び招聘するパレスチナの「アルカサバ・シアター」は、我々のフェスティバルと共同製作による「新作」の発表となるが、その美術を椿昇氏に委託した。パレスチナを訪ねた椿氏は、そこに厳然と横たわる我々の日常との差を埋めようとするのか、それともその逆になるのだろうか。結果はこのフェスティバルでわかることになる。チェニジアの劇団は、崩壊する家族と弱き男たちの肖像をとらえ、現代社会の病巣が国を越えた共通する問題であることを提示している。
  日本の地方の演劇はどうなっているのだろう。1999年のフェスティバルから「リージョナルシアター・シリーズ」というプログラムをはじめた。少しその成果を出すことを今回はねらった。良い作品を紹介したいという我々の情熱は今もあつく燃えていて、時にドン・キホーテになったと錯覚するほどである。

東京国際芸術祭(TIF)ディレクター    
市村作知雄    




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