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『素晴らしい事が終わるとき』 稽古2日目 「工事開始」

稽古は昨日始まったばかりなのに、役者さんたちの声にはもう色がついているのが読み合わせだけでも伝わってきます。時には身振り手振りを交えたり、他の人の台詞の間も刻一刻と表情が変化したり…当たり前といえば当たり前ですが、リーディングであってもそこにあるのは芝居なのです。

この戯曲はアメリカの石油問題や中東の現代史を扱っているため、私たち日本人にはなじみのうすい宗教的な概念や歴史に関する台詞が多いのですが、大崎由利子さんのしっとりとした語りだと何の抵抗もなく届いてくるから不思議です。同じく出演者の工藤さんと申さんも頭に「?」が浮かぶと演出家に「これってどういうことですか?」と気軽に質問し、咀嚼して自分のものにできるまでざっくばらんにディスカッションする、という良い雰囲気ができあがりつつあります。

ひととおりの読み合わせの後、いよいよ演出がついていきます。「ここでSE(効果音)が入ります」「この台詞は皮肉っぽく言ってみて」などと演出がつきはじめると、それまで全くイメージできなかった舞台のビジョンが鮮やかに浮かんできます。それまで何とも思わなかった台詞が、言い方ひとつ変えるだけでとてもコミカルに聞こえたりするのです。無限の可能性の中で、演出家にはどのような「絵」が浮かんでいるのか。昨日まではただただ未知数だったこの戯曲が、着実に細胞分裂し、生命を吹き込まれつつあります。

実はこの戯曲、シェリー・クレイマーによる原作は一人芝居用に書かれているのです。しかしこの舞台の出演者は女性3人。3人が演じる「ひとりの女性」が舞台上でどのように語るのか――それは幕が開いてのお楽しみ。

舟川絢子

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mark_america アメリカ現代戯曲
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mark_rabia 『これがぜんぶエイプリルフールだったなら、とナンシーは』
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