〈都市の肖像シリーズ Vol.1〉
『Re:Re:Re:place 〜隅田川と古隅田川の行方(不明)〜』
2005年12月14日(水)─16日(金)
アサヒアートスクエア(アサヒスーパードライホール 4F)
この舞台の出発点である謡曲「隅田川」は、出会えない能だといわれる。人商人にさらわれた息子を探し、東(あづま)の果ては隅田川に辿り着く母。対岸に築かれた塚では大念仏の法要がとり行われようとしており、去年同月同日人々がそこへ葬ったという幼い迷い子こそはまさしく自分の探す子梅若丸であったことを知る。民衆の唱える大念仏のなか母にはわが子の声が聞こえ姿も見えたのだが、それは一時の幻であった。
ところで、この能の舞台としての隅田川、そして梅若伝説は、実はこの東(あづま)の地でも鐘ヶ淵と春日部という二つの土地に根を下ろしている。それぞれに隅田川と(古)隅田川が流れており、どちらにも梅若塚やゆかりの碑などが存在しているのだ。
歴史上いく度かの河川(線)の引き直しを経て、もはや連絡することなく、いまこの瞬間も同時に流れている二つの隅田川を巡り、書き換え、置き換えられ、移植され、映し重ねられてゆくさまざまな夢、「都市の記憶」が浮かび上がってくる。産業革命とともに紡績と鉄道がさまざまな“糸”と“線”を川筋に交錯させてゆくこの土地に、吸い込まれていった無数のウメワカ(梅若/埋若)丸の、さて行方やいかに‥