『三人姉妹』の登場人物の性別が入れ替わっていること。一見荒唐無稽なこの設定は、「前提を疑う」ことを見るものに問いかけている。ある種のパロディーのようにどこかユーモラスでもあるこの転換は、性別さえも超えて、絶望に溺れ、希望を追い求める人々の、あるがままの姿を描き出す。
ごくありふれた日常に起こる些細な出来事は、時と共に過ぎ去ってゆく。一方でその不協和音は、日々の生活の中に織のように積み重なっていく・・・。 チェーホフ四大劇の一つ『三人姉妹』の文脈を根底から覆すという問題提起が、今日において、いかにアクチュアルな発言であり得るか、演出家ダニエル・ベロネッセは証明してみせる。 アルゼンチンのストリートから飛び出したかのような、俳優たちの身体。照明や音響、衣装などの演出効果を可能な限り排除したこの作品には、現実との連続性をもった空間が立ち現れる。 時に激昂し、時に傷つきやすい登場人物たちは、同時多発的に激しい身振りや感情の起伏を伴ったダイアローグを応酬する。12人の俳優は、演技をしていない時でさえ、舞台上に並べられた椅子に腰をかけ、そこに存在している。静劇と呼ばれるチェーホフの原作とは一線を画し、既存の演劇スタイルに捉われない本作は、「いかに生きるべきか」というメッセージを真っ向から突きつけている。 |