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About the work 作品について

ストーリー

都心から少し外れた、住宅街の中にある小さな商店街。商店街と言えども開けている店は疎らで、ほんの十店舗ほどが営業を続けているだけである。舞台は、その商店街の古本屋。父の代からの商売で、長男の隆司が妻と共に経営している。
母が倒れ、母の希望により、店の二階の窓の近くにベッドが置かれることになった。まるで宙に浮いているような場所に、ベッドは存在し続ける。
現在、両親は共に他界した後で、長男夫婦が暮らしていただけであったが、そこに妹とその娘が同居することになる。妹が寝たきりの状態になったからである。母が死んでからは片付けていたベッドを再び二階に戻し、隆司は妹をそこに眠らせる・・・。

作品解説

山岡徳貴子は、これまで集団自殺、宗教団体、性犯罪者などの社会的題材を取り上げながら、人間の内面を執拗にえぐり、現代社会に生きる者の病理を、残酷さとユーモアを併せ持ちながら暴き出してきた。しかし近作では、その舞台はどこにでもある平凡な場所(=団地や商店街)となり、他者への嫉妬、憧れ、焦燥、疑念、嫌悪といった日常的に存在する営み、風景の中から、現代の日本社会に潜む行き所のない人間たちの生態を暴き出すことに、山岡はその矛先を向けている。
新作『着座するコブ』は、どこにでもある小さな寂れた商店街の人間関係に拡がる「自己」と「他者」の歪みが脹らみに脹らみ、やがては人間が持つ普遍的なしたたかさと現代人の脆弱な姿が不気味に浮き上がってくるだろう。


山岡徳貴子、リージョナルシアター・シリーズのプロデュースによる初の東京公演
俳優、劇作家として実績を残してきた山岡徳貴子だが、今回のプロデュース公演が東京での初演出作品となる。キャスト・スタッフは、前年の同部門で上演された『浮力』(北川徹/作・演出)同様、東京で活動するプロの俳優、スタッフを中心に編成された。 リージョナルシアター・シリーズの特徴であるアドバイザーは、文学座の演出家・高瀬久男氏に依頼し、創作段階において、演出面でのアドバイスがされる。出演は、杉山文雄(グリング)、野中隆光(THE SHAMPOO HAT)という東京の小劇場で今最も脂がのっている人気劇団からの2人に、三村聡(山の手事情社)、鈴木陽代の実力派、遊園地再生事業団の若手女優田中夢、魚灯のカンパニーメンバーであり、マレビトの会(松田正隆主宰)などにも出演する武田暁が加わり、個性・実力が兼ね備わった充実のキャスト陣となった。スタッフでは、経験豊富な齋藤茂男(照明)、加藤ちか(美術監修)と、山岡公演では欠かせない存在の狩場直史(音響)が強力に山岡ワールドをサポートする。 京都発最注目の劇作家による新作書き下ろし、初の東京公演は必見の舞台となる。